19日のこと・・・②
実家の前に車を停めた。 「インターホン鳴らた方が良いかな、でも家族やし・・・そのまま行こうか」 どうでも良いことで慎重になってしまう私。 彼は笑って、 「え?そこ大事なん?まかせるけど・・・」 ってクスクスと笑っている。 一応インターホンを鳴らしたけど、返事が無いので・・・。 門を開けて庭を通り玄関前に行くと、静かにドアが開いた。 母が顔を出しだ。 「いらっしゃい」 笑顔で出迎えてくれた母。 いつもお洒落な母、でも今日は少しだけそれ以上にお洒落だった。 そして、肌が綺麗でいつもノーメイクは母だけど、今日は少しだけ口紅をさしていた。 玄関に入り、リビングのドアを開けると誰も居なかった。 「お父さんは?」 って聞くと、 「トイレに行ってる」 って母が言った。 コートを脱ぎ、彼のコートも預かって別室の和室に置きに行った。 そしてリビングへ戻ると、父と彼が挨拶を交わしている。 「初めまして、○○です。 今日はお時間を頂いてありがとうございます」 と彼が言うと、 「こちらこそ、よく来てくれましたね、どうぞ座って」 父は自分専用の大きな黒い椅子に腰を掛けた。 この椅子は父の還暦の誕生日に兄弟で贈ったもの。 腰痛持ちの父の腰に負担が掛からないように、背もたれが動く。 父に促されて彼が横のソファーに座った。 私は彼の横に静かに座った。 「この子から聞いていると思うけど・・・。 僕は気難しいことを言うところがある、でも決して人を受け入れない人間じゃ無いから」 遠まわしに、年末のことを言っている父。 「はい」 彼は頷いていた。 最初は仕事のことから始まり、彼の家族のことを話したりした。 たくさんの質問に誠実に答える彼。 そんな彼を見て、父と母の顔が次第に和んで行くのが解った。 母は最初はお茶を入れてくれた。 少しすると、用意してくれていたいちごと私たちが持って行ったケーキ。 そして、コーヒーを入れに席を立った。 「ちょっと手伝ってくれる?」 と母に言われて、私は台所へ行った。 「良い人だね」 母が言った。 「うん」 私は嬉しい気持ちで、頷いた。